+R2最終話後
+スザルル(スザクのみ)
+ルル死ネタ
+皇暦2020年設定



If possible, if one can I want to meet you.



赤や黄色に鮮やかに色を染めていた木々たちも、今ではすっかり葉を落とし、 冬の景色の一部と化している。
雪こそ降らないものの、吐く息は白く、空気はピンと張り詰めたように冷たい。

サングラスを掛け、出来るだけ目立たない服装に身を包み、いまや世界的英雄となったゼロ――― 今は亡き裏切りの騎士、枢木スザクは、寒空の下とある場所に訪れていた。

祖国で言う「師走」の意味通り、ゼロとしての仕事も休む暇のないほど忙しく、 一度は来ることを諦めかけたものの、どうにか今日、この場所を訪れることが出来た。

先ほど花屋で選んできた花束を片手に、目的のものの前へと歩んでゆく。
辿り着いたところに、そっと白いユリの花束を置き、そのままその場にしゃがみこむ。

冬の寒さによってさらに冷たく感じられるそれに刻まれた文字を、指でそっとなぞった。


「―――――ルルーシュ」


ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
かの有名な神聖ブリタニア帝国の悪逆皇帝の名。

そして、枢木スザク自ら手にかけた、最初で最後の親友で、かけがえのない大切な人の名。



確かにスザクは、彼を、ルルーシュを憎んでいた。
彼のやり方は間違っていると思っていたし、何より我が主であったユフィの敵であったから。

けれど分かってしまった。彼はすべてを守りたかったんだと。ルルーシュは、 ”あの頃”と何一つ変わっていなかったんだと。

スザクは知っていたはずだった。彼は仮面を被り、自分を偽ることが何よりも得意だったと。 知っていたはずだった。彼がナナリーを、守りたい人たちを守るためならなんでもする人間だと。


枢木神社で別れたあと、一人で考えたことがあった。


あの時スザクは、よく自分の前に顔を出せたものかと思っていた。
だけどそれは裏を返せば、ルルーシュの方にもそれだけの覚悟があったということだ。 罵られることも分かった上で、それでもスザクに縋るしかなかった。 プライドの高い彼がスザクに向かって頭を下げたのが何よりの証拠で、 ルルーシュ自身も相当切羽詰っていたんだろう。

あの時スザクは、決して冷静であったとはいえなかった。ゼロの行動と、 ルルーシュに裏切られたという感情と、そして報われなかったユフィの思いと。
いろんなものが混ぜ合わさって、自分の中でも混乱していた。

だから、後になって冷静に考えれば、ルルーシュのあの瞳の意味と、 彼の置かれている状況ぐらいは理解できた。


あの時ルルーシュは、泣いていた。スザクに裏切られたと思って。

思えば、ゼロは何度もスザクを仲間にしようとしていた。いつだって、まずは手を組むことを考えていた。
少なくともルルーシュは、ゼロになっても、敵となっても、 スザクを親友だと思っていてくれていたのかもしれない。

手を組むべきなのは、最初からスザクの方だったんだろうか。

そう考え、スザクはひとつの決心をした。

”もし、次にルルーシュと手を組むか否か選択を迫られたら、そのときはきっと”



スザクは立ち上がり、空を見上げた。冬にしては珍しく、雲ひとつない綺麗な真っ青な空だった。
そして静かに語りかけた。まるで、彼がその向こうで聞いているかのように。




「君がいなくなって―――僕が君を殺して、気づいたことがあるんだ。

僕の中で、君の存在は僕が思ってたよりもずっと大きかったみたいなんだ。
ふと気が付くと、いつも君のことばかり考えていて。それは昔のことだったり、 アッシュフォード学園でのことだったり、……敵同士として戦っていたときのことだったり。

だから思うんだ。ルルーシュ、君のいない世界は、僕にとっては色を失ったも同然なんだって。

枢木スザクは、死んだんだ。悪逆皇帝ルルーシュとともに。

出来ることなら本当にそうだったらよかった。 いや、分かってるさ、ちゃんと。生きることこそが、僕に与えられた罰だって事ぐらい。


今、君は笑えてる?幸せに、過ごせてる?

安心していいよ。君が守った人々は、君が与えてくれた明日は、僕が必ず守り通すから。


でも、ひとつだけ君にお願いがあるんだ。

どうか、僕がちゃんとやれてるか見守っていてくれないかな。
……いつか僕が君のもとに行く時まで。
それまでどうか、僕を見守っていて欲しいんだ。ルルーシュ。



最後になっちゃったけど、20年前の今日、この世界に生まれてきてくれてありがとう。
短い時間だったけど、君と同じ時を過ごせて本当によかった。






―――誕生日、おめでとう。ルルーシュ」





誰もいない草原で、ふわりと風が吹いた。

それはまるで、ルルーシュが笑っているような、そんな風だった。











Happy Birthday Leloich!!