皆の好意を一身に受け止めてもなお、
その瞳が、揺らぐ事は無い。
あぁ、
だからきっと俺は、
俺は――――
Chain [T×H]
「ですから雲雀さん、昨日はどこへ行ってたんですか?!電話も繋がらないし、メールだって返事が来ないし、俺がどれだけ心配したか!」
「朝っぱらからうるさいよ…静かにしてくれないかな」
そう答えると、俺の愛しい人はすぐに本へと視線を戻す。
「はぁ・・・」
俺はため息を一つ、こうなってしまった以上、もう聞き出すことは不可能だ。
雲雀さんと出会ってからもう10年。そして、俺が雲雀さんに思いを寄せることもう10年。
気まぐれで、自分勝手で、超がつくほどの戦闘マニアで…
そんな雲雀さんに惚れてしまったが最後、もう後戻りはできないだろう。
やっと振り向いてくれたと思ってもこれだ。
本当に俺に対して好意を持ってくれているのだろうかと疑ったこともしばしば。
さすが何者にも囚われない孤高の浮雲…というべきか。
昨日だって、俺に何も告げずにふらふらと外出。
何度電話を掛けようが、何通メールを送ろうが完全無視。
挙句の果てには電源まで切られる始末。
どうやったって俺の元に繋いでおくなんて無理だって分かってる。
でもどうしても繋いでおきたくなるのが男の性ってやつでしょう?
そう、それが男の性と言うやつなわけで。
だから雲雀さんをそうしておきたい、と思っている人間は他にもいる。
例を挙げれば、雲雀さんの元家庭教師やらボンゴレの霧の守護者やら…
彼らがそう思っているだけならまだいい。
ところが、あろうことか雲雀さんは俺の知らないところで彼らと会っていたりしている。
それも俺に隠すなんてせず、堂々と。
嫉妬して欲しいのかと疑ってしまうくらいだ。
どうしてこうも気持ちが伝わらないんだろうか。
雲雀さんにとってはそうじゃないかもしれないが、俺にとっては雲雀さんだけなんだ。
好きで好きで、愛しくてたまらないと言うのに、どうしてそれが伝わらないんだ。
いや…もしかしたら伝わっているのかもしれない。
彼のことだ、そうやって俺をからかっているんだろうな。
こうなったら本当に繋いでしまおうか。
部屋に閉じ込めてしまって、誰とも会えないようにしてしまおうか。
鎖で繋いで、もうどこへも行かないように…
「綱吉?」
「えっ?あ、いや、そんなつもりじゃなくって、これは…」
とっさに言い訳をしてから気づく。
俺何も言ってないじゃん…
「? そんな顔して、今日は素直に引き下がると思ったら、何?」
「えっと…その」
「安心しなよ?―――――、だから」
「え…?今なんて…」
突然の言葉。
思わず耳を疑うような、そんな言葉。
「何?二度も僕が言うと思ってるの?」
できることなら。
「…は?、言うわけないでしょ?君、何考えてるの」
「なっ…雲雀さん俺の心読めるんですか?!」
「うるさい」
「え、ちょっ、もう一回だけ。もう一回だけ言ってください、お願いします」
「………」
「ちょ、雲雀さぁん!!」
自惚れて、いいんだろうか。
こんな言葉を聞けるなんて、俺は幸せすぎだ。
結論。
俺が思ってたより、雲雀さんの心は近くにあったらしい。
当分、繋いでおく必要はないようだ。
……たぶん。
だとしてもこんなに嬉しい言葉はないな。
”君だけだから”なんて。